日々の大半を、私はAIと対話して過ごしている。生成された画像や漫画を整え、プラットフォームへと送り出す。最新の技術を操り、自らの手で収益を生み出す今の生活には、確かな手応えを感じている。しかし、いつの間にか私の世界は、静かな部屋の四角いモニターの中に凝縮されていた。
座りっぱなしで体は固まり、朝起きても「あぁ、また今日も作業か」と、かつてのワクワク感はどこか遠くへ。重だるい体を引きずるようにデスクへ向かう日々に、ふと虚しさがよぎることもあった。そんな私が、意を決して導入したのが「骨伝導イヤホン」だった。
耳を塞がないこの不思議なデバイスを装着し、制作の手を止めて外へ出る。目的は「耳活散歩」だ。歩きながらAI関連の最新ポッドキャストや、お気に入りの音楽を聴く。耳元でクリアに音が響くのに、周囲の風の音や街のざわめきもしっかり聞こえる。その「開放感」が、凝り固まった思考を解きほぐしていくのが分かった。
驚いたのは、歩き始めて10分ほど経った頃だ。デスクで何時間悩んでも出てこなかった新しい物語の構想や、魅力的なプロンプトのフレーズが、次々と頭の中に浮かんできたのだ。画面を睨みつけていた時には閉じていた「創造の引き出し」が、外の光を浴び、リズムよく足を動かすことで、音を立てて開いていく感覚だった。
散歩から戻ると、あんなに重かった体が嘘のように軽い。セロトニンが分泌されているからだろうか、以前のような「やらされている作業感」が消え、「早く形にしたい」という純粋な創作意欲が戻ってきた。
夜の寝付きも劇的に良くなった。朝、目覚めた瞬間に「よし、今日はあの表現に挑戦しよう」と自然に思える。1日15分、耳からインプットしながら歩くだけ。たったそれだけのことが、AIという最先端の荒波の中で、私という一人の表現者を支える強力な「錨(いかり)」になってくれたのだ。
これからも私は、この小さなイヤホンと共に、デジタルとリアルの世界を行き来しながら、自分にしか描けない世界を紡いでいこうと思う。




