ひな祭りは、単なる年中行事ではありません。この美しい祭りは、日本の豊かな文化と伝統を反映しています。
女のお子さんも含めて、ひな祭りを心待ちにしている人は多いでしょう。
今回は、ひな祭りの魅力的な歴史から現代のお祝いの仕方、そして心を温める伝統的な食べ物までを紹介していきます。
どんな歴史や由来があるの?ひな祭りの魅力
ひな祭りは”桃の節句“とも呼ばれ、女の子の健康と成長を願ってのお祝いとして知られています。そして、このお祝いの起源は、古い日本の歴史、特に平安時代まで遡る(さかのぼる)とされているのです。
ここでは、ひな祭りに関するさまざまな由来や、地方による独特の風習などについて紹介していきます。
ひな祭りの起源とその変遷
ひな祭りの始まりは、中国の上巳(じょうし)の節句に起源を持つとされています。
上巳の節句には、人形を用いて汚れを移し、災難を避ける流しびなの習慣がありました。この流しびなは、もともと女の子に限定されたものではなく、健康と安全を祈る行事だったようです。
この慣習は、平安時代に日本に伝えられました。しかし当時は儀式というよりも、紙の人形を川に流す貴族たちの遊びとして広まっていったのです。
時が経つにつれて、人形を川に流す習わしから、人形を飾る習わしに変わり、日本特有の祝い事としての形を整えていきました。
現在では、女の子の健康と幸せを祈り、災いから守る意味を込めてひな祭りをお祝いするようになっています。
日本各地のひな祭りの習慣
日本各地には、さまざまなひな祭りの習慣があります。
たとえば、茨城県水戸市では今も流しびなの伝統が残っていて、「五軒紅梅(ごけんこうめ)ひな流し」の時には数百の和紙で作られたひな人形が川に流され、観光客でにぎわうのです。
また、愛知県の三河地方や岐阜県の山間部では、子供たちが近所を訪ねてひな飾りを見学し、住人からお菓子をもらう習慣があります。この風習は子供たちと地域コミュニティの結びつきを強め、礼儀を学ぶよい機会となっているようです。
さらに、沖縄県ではひな人形を飾る家庭は少なめですが、この日はお祝いの食事を用意し、海辺で過ごす風習があります。これは古くからの習わしで、海水で身を清め、白い砂で浄化するという意味が込められているのです。
ひな人形を飾る理由とタイミング
流しびなと同様に、女の子の災いを払ってその身代わりになるとされているのがひな人形です。
ひな人形を飾る時期に厳密なルールはありませんが、立春(りっしゅん)が過ぎる2月の中旬頃から始めるのが好ましいとされています。多くの家庭では、3月3日のひな祭りの一週間前までには飾ることが多いです。
片付ける時期にも特に定めはなく、目安としてはひな祭りの終わりから二週間以内、または、遅くとも4月3日(旧暦の3月3日)までに片付けることが一般的とされています。
現代のひな祭りの祝い方
ひな祭りでは、家庭でひな人形を飾り、家族が集まって女の子の健康や幸せを祈りながらお祝いを行うのが、一般的な昔からの習わしです。
そのときに、ひな祭り特有の美味しい食べ物を皆で楽しみます。特に初節句の際は、家族や親族が集まり、盛大にお祝いすること少なくありません。
また、家の中に春の花を飾ることもよくあります。春の花として、桃の花や菜の花、チューリップなどが彩りを添えることが多いのです。
さらに、神社やお寺でご祈祷を受ける家庭も多く、厄払いや健康、幸福を祈る大切な日になっています。
現代でも、もちろんこの風習は受けつがれています。
しかし、現代では主役の女の子へのプレゼントや記念撮影など、さまざまな形で祝福をすることが多くなっています。
おいしい食事を囲んでパーティーをしたり、レストランで豪華な食事会を開いたりすることが、現代では多くなっているようです。
ひな祭りに欠かせない伝統食とその背景を紹介
ひな祭りには、ひし餅やお酒など、特別な伝統食があります。
これらの食べ物は、女の子の健康や幸せを祈る意味を込めて、昔から今日に至るまで引きつがれてきました。
地域によっては異なる場合もありますが、ここでは一般的によく知られているひな祭りの代表的な食べ物を紹介していきます。
ひし餅
ひし餅は、ひな祭りで見かける代表的なお供え物です。三層になっていて、上部の桃色、中央の白、下部の黄緑色が春を感じさせる色合いと通じています。
桃色は魔除けや敬祖の象徴、白色は清潔や子孫繁栄を、そして黄緑色は健康や魔除けの意味を持つとされ、昔から重んじられているのです。
ひし形は、魔除けの効果があるとされるひしの実を模しています。
ひしの実の持つ神秘性や強い繁殖力を子孫繁栄と結びつけ、無病息災(むびょうそくさい)や多子多孫(たしたそん)の願いを込めて、ひな祭りに使われるようになったのです。
ひなあられ
ひなあられは、ひし餅の3色を模した米菓子です。このお菓子は、ひし餅を外出先でも楽しめる形にしたことが起源といわれています。
地域によって、ひなあられの形や味わいに違いがあります。たとえば、関東地方では甘く味付けされたポン菓子タイプが普通ですが、関西地方では塩味のあるあられが一般的です。
3色のひなあられに加え、黄色を加える地域も存在します。
ちらし寿司
ちらし寿司は、ひな祭りだけでなく、さまざまなお祝いの場で楽しまれている料理です。海老(えび)や錦糸卵(きんしたまご)などの縁起のよい具材をたっぷり使っているので、きっと幸せを呼び込みますね。
海老は長寿を象徴し、赤色は魔除けとされています。また、れんこんは未来を見通す力、錦糸卵は財運を、人参は根ざし生きる力を、そして、豆は勤勉と健康を表しているのです。
ひな祭りの時期には、ゆでた菜の花を加えると、一層華やかな見た目になるのでおすすめします。
はまぐりのお吸い物
ひな祭りの時期は、はまぐりが旬を迎え、栄養価が高くなります。そして、貝殻がぴったり合うはまぐりは、良縁や夫婦円満を象徴するとされているのです。
また、これは、ひな祭りに磯遊びを楽しむ古い習慣が由来だとも言われています。
というのも、昔は旧暦の4月にひな祭りが行われ、その際に海岸で拾った貝を祭りの供え物としていたとされているからです。
白酒(しろざけ)と甘酒(あまざけ)
ひな祭りの歌に出てくる白酒とは、米を蒸して麹と混ぜ合わせ、酒や焼酎を加えて甘く熟成させた飲み物です。アルコールが含まれるため、子どもは飲めません。
一方、甘酒とは、米に麹を合わせて、米のでんぷんを糖化させた甘い飲料です。アルコールの含まれるものと含まれていないものが存在します。
子供たちは、アルコールを含まない甘酒を楽しみましょう。
白酒は厄払いの意味合いを持ち、江戸時代からひな祭りに用いられているお酒です。また、ひな祭りの時には、桃の花を白酒に浮かべると風情あります。
桜餅
春の象徴である桃色の餅と緑色の桜の葉が特徴の桜餅は、ひな祭りに最適なお菓子です。
桜餅がいつから用いられるようになった由来はいくつかあります。端午の節句の柏餅と対をなすものとして始まったという説や、食べやすさから子ども向けに提供されるようになったという説などです。
また、桜餅のほかにも、草餅(よもぎ餅)や三色団子を食べる地域も存在します。
おわりに
ひな祭りのお祝いの仕方は、時代と共に変わりつつあります。
しかし、その核となる文化的価値と伝統は今もなお色褪せることはありません。
ひな祭りが持つ豊かな歴史と文化的意義を改めて認識し、その伝統を大切に受け継いでいくことは、私たちにとって必要なことなのかもしれませんね。