今年もまた、暑い夏がやって来ました。
窓辺に吊るされた風鈴が、風に揺れてチリン、チリンと鳴る。
それだけで、ほんの少し暑さがやわらぐように感じることがありますよね。
でも、ふと考えてみると不思議ではありませんか。
風鈴は、いったいいつから日本の夏にあるのでしょうか。
じつは風鈴は、最初から「涼しさを楽しむ道具」だったわけではありません。
もともとは中国の占いに使われた道具が起源とされ、日本に伝わってからは魔除けの意味を持つものとして使われてきました。
この記事では、風鈴の起源や日本での歴史、ガラス風鈴が広まった流れ、そして代表的な風鈴の種類まで、わかりやすく紹介します。
風鈴はいつからある?起源は中国の「占風鐸」
風鈴の起源は、中国の「占風鐸(せんふうたく)」にあるといわれています。
占風鐸とは、風の向きや音の鳴り方によって物事の吉凶を占うための道具です。
竹林などに吊るされた風鐸が風に吹かれて鳴り、その音や風の流れから、これから起こることを読み取ろうとしていたと考えられています。
今の風鈴は、夏の涼しさを感じるためのものという印象が強いですよね。
けれど、もともとは「風を読むための道具」だったというのは、とても面白いところです。
風鐸(ふうたく)とは?風鈴とは何が違うの?
風鈴のもとになったとされる風鐸は、現在のガラス風鈴とは少し姿が違います。
風鐸は、青銅などの金属で作られた鐘のような形のものです。
お寺の屋根の四隅に吊るされている、金属製の飾りを見たことがある方もいるかもしれません。
あれが風鐸です。
風に吹かれると、ガラン、ガランと低く響くような音を鳴らします。
現在の風鈴は、家庭の軒先や室内で楽しむものが多く、音も軽やかで涼しげです。
一方、風鐸は寺院の建物に吊るされ、魔除けや仏教建築の装飾としての意味が強いものでした。
簡単にいうと、次のような違いがあります。
| 種類 | 主な使われ方 | 音の印象 |
|---|---|---|
| 風鐸 | 寺院の軒先などに吊るされる。魔除けの意味を持つ | 低く重みのある音 |
| 風鈴 | 家庭の軒先や室内で楽しむ。涼を感じる夏の風物詩 | 軽やかで涼しげな音 |
この風鐸が、のちに日本の暮らしの中で風鈴へと変化していったのです。

薬師寺 大講堂の風鐸
風鈴は仏教とともに日本へ伝わった
風鐸は、仏教とともに日本へ伝わったといわれています。
日本に伝わった当時、強い風は災いや病を運んでくるものと考えられていました。
そのため、風に吹かれて音を鳴らす風鐸には、邪気を払う力があると考えられるようになります。
お寺の屋根の四隅に風鐸が吊るされるようになったのも、そのような魔除けの意味があったためです。
風鐸の音が聞こえる範囲は、災いから守られる場所と考えられていたともいわれています。
今では涼しげでやさしい印象のある風鈴ですが、昔は人々の暮らしを守るための大切な音でもあったのですね。
平安・鎌倉時代には貴族の屋敷にも広がった
その後、風鐸は寺院だけでなく、貴族の屋敷にも吊るされるようになりました。
目的は、やはり魔除けです。
外から疫病神や邪気が入ってこないように、屋敷の軒先に吊るしていたといわれています。
このころの風鈴は、今のように誰でも気軽に楽しめるものではありませんでした。
金属で作られていたため高価で、手に入れられるのは貴族や裕福な人たちが中心だったと考えられます。
現在のように、夏になるとホームセンターや雑貨店で気軽に買える風鈴とは、かなり違った存在だったのでしょう。
ガラス風鈴が登場したのは江戸時代
現在、私たちが風鈴と聞いて思い浮かべるもののひとつが、ガラス製の風鈴です。
透明なガラスに涼しげな絵柄が描かれ、短冊が風に揺れてチリンと鳴る。
そんなガラス風鈴が登場したのは、江戸時代中期ごろといわれています。
当時は、ガラスそのものがとても珍しく、ガラス製の風鈴は非常に高価なものでした。
そのため、最初から庶民が気軽に買えるものではありませんでした。
しかし、江戸後期から明治にかけてガラス製品が少しずつ広まり、風鈴も庶民の暮らしに近いものになっていきます。
そして、風鈴は魔除けの道具から、夏の涼を楽しむ風物詩へと変わっていきました。
なぜ風鈴の音は涼しく感じるの?
風鈴の音を聞くと、なぜか涼しく感じることがあります。
実際に気温が下がるわけではありません。
それでも、チリン、チリンという音を聞くと、風が通り抜けたような気がして、気持ちが少し落ち着きます。
これは、風鈴の音が「風が吹いている」と感じさせてくれるからかもしれません。
昔の日本の家は、窓を開けて風を通しながら夏を過ごすことが多くありました。
その中で、風鈴の音は「風が来たこと」を知らせてくれる合図でもあったのです。
エアコンのない時代、人々は目や耳、肌で涼しさを感じようとしていました。
風鈴は、まさに「耳で感じる涼しさ」だったのですね。
現代の風鈴は、楽しみ方にも工夫が必要
風鈴は、今でも日本の夏を感じさせてくれる大切な存在です。
ただし、現代では少し注意も必要です。
昔に比べて住宅同士の距離が近くなり、マンションやアパートに住む人も増えています。
自分にとっては心地よい音でも、隣の家や近所の人にとっては気になる音になってしまうことがあります。
特に、夜間や強風の日は、風鈴の音が思った以上に響くこともあります。
そのため、外に吊るす場合は、時間帯や風の強さに気を配ると安心です。
近所への音が気になる場合は、室内で楽しめる卓上型の風鈴を選ぶのもよい方法です。
テーブルや窓辺に置いて、自分の空間の中で風鈴の音色を楽しめます。
風鈴のよさを長く楽しむためにも、今の暮らしに合った使い方を選びたいですね。

日本の代表的な風鈴を紹介
日本には、素材や産地によってさまざまな風鈴があります。
同じ風鈴でも、ガラス、鉄、真鍮(しんちゅう)、竹、炭など、素材が変わるだけで音色も雰囲気も大きく変わります。
ここからは、日本の代表的な風鈴を紹介します。
気になる風鈴があれば、個別の記事もぜひ参考にしてください。
ガラス風鈴(江戸風鈴)
風鈴と聞いて、まずガラス風鈴を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
透明感のある見た目と、軽やかで涼しげな音色が魅力です。
夏休みに祖母の家へ遊びに行くと、軒先でカラン、カランと鳴っていた。
そんな懐かしい風景を思い出す方もいるかもしれません。
江戸風鈴は、ガラスの内側から絵を描くものもあり、見た目にも涼しさを感じられます。
🌟 こんな人におすすめ
爽やかで軽やかな音色を楽しみたい方におすすめです。
夏らしい雰囲気を気軽に取り入れたい方にも向いています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
南部風鈴(なんぶ ふうりん)
南部風鈴は、岩手県の南部鉄器で作られる鉄製の風鈴です。
ガラス風鈴とは違い、リーン、リーンと深く澄んだ音を響かせます。
鉄ならではの重みのある音色は、落ち着いた雰囲気を楽しみたい方にぴったりです。
見た目も渋く、和室や落ち着いた空間によく合います。
🌟 こんな人におすすめ
深みのある音色で癒されたい方におすすめです。
派手さよりも、落ち着いた和の雰囲気を楽しみたい方に向いています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
高岡風鈴(たかおか ふうりん)
高岡風鈴は、富山県高岡市の鋳物技術から生まれた風鈴です。
真鍮(しんちゅう)製のものが多く、美しい輝きと長く残る余韻が魅力です。
陽の光を受けてキラリと輝く姿は、とても上品です。
音色も澄んでいて、余韻をゆっくり楽しめます。
🌟 こんな人におすすめ
真鍮の美しさと、余韻のある音色を楽しみたい方におすすめです。
見た目にも高級感のある風鈴を選びたい方に向いています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
小田原風鈴(おだわら ふうりん)
小田原風鈴は、砂張(さはり)と呼ばれる銅と錫(すず)の合金や、真鍮などで作られる風鈴です。
「松虫風鈴」「鈴虫風鈴」などと呼ばれることもあり、虫の音を思わせる繊細な音色が特徴です。
夏の風鈴でありながら、どこか秋の気配も感じさせてくれます。
涼しさだけでなく、静かな情緒を楽しみたい方に合う風鈴です。
🌟 こんな人におすすめ
虫の声のような、やわらかく繊細な音色を楽しみたい方におすすめです。
落ち着いた和の雰囲気が好きな方にも向いています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
明珍火箸風鈴(みょうちんひばし ふうりん)
明珍火箸風鈴は、兵庫県姫路市の明珍家に伝わる技術から生まれた風鈴です。
もともとは甲冑師の流れをくむ職人技によって作られており、火箸が触れ合うことで美しい音色を生み出します。
一般的な風鈴とは姿も音も異なり、まさに職人技の結晶といえる存在です。
澄んだ音色は、とても上品で印象に残ります。
🌟 こんな人におすすめ
職人技が光る、特別感のある風鈴を探している方におすすめです。
他の風鈴とは違う、唯一無二の音色を楽しみたい方に向いています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
別府竹風鈴(べっぷたけ ふうりん)
別府竹風鈴は、大分県別府の竹細工と風鈴を組み合わせた風鈴です。
竹のかごに風鈴を包み込んだような姿は、他の風鈴とは少し違った温かみがあります。
竹の自然な風合いと、風鈴の音色が合わさることで、やさしい雰囲気を楽しめます。
別府温泉のお土産としても親しまれている風鈴です。
🌟 こんな人におすすめ
自然素材の温もりを感じたい方におすすめです。
和風でやさしい雰囲気の風鈴を探している方に向いています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
備長炭風鈴(びんちょうたん ふうりん)
備長炭風鈴は、その名の通り備長炭を使って作られた風鈴です。
炭でできていると聞くと、音が鳴るのか不思議に感じるかもしれません。
しかし、備長炭はとても硬く、キン、キインと金属のように澄んだ音を響かせます。
見た目も独特で、一見すると風鈴とは思えない雰囲気があります。
🌟 こんな人におすすめ
珍しい素材の風鈴を楽しみたい方におすすめです。
人とは少し違う、個性的な風鈴を探している方に向いています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
室内で楽しむなら卓上風鈴もおすすめ
風鈴を楽しみたいけれど、外に吊るすと近所への音が気になる。
そんな方には、卓上風鈴もおすすめです。
卓上風鈴なら、テーブルや机の上に置いて、自分の部屋の中で音色を楽しめます。
風の強い日や夜間でも、外に吊るす風鈴より音の管理がしやすいのが魅力です。
マンションやアパートに住んでいる方でも、暮らしに合わせて風鈴の涼しさを取り入れやすくなります。
【商品紹介】暑い夏を卓上風鈴で楽しもう
ここでは、Amazonや楽天で見つけた、かわいらしくてそばに置きたくなる卓上風鈴を紹介します。
部屋の中で風鈴を楽しみたい方は、ぜひ参考にしてください。
■『舟型 会津桐卓上風鈴・置き風鈴 ガラス風鈴 花生け付』
蒔絵仕上げの手作り風鈴です。
スタンドの台は会津桐でできています。
会津喜多方の蒔絵仕上げで、とても美しい雰囲気があります。
専用の箱に入っているので、夏の贈り物にも向いています。
■『江戸風鈴(ガラス) 招き猫』
風鈴といえば、やはりガラス製の江戸風鈴を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
招き猫のデザインはかわいらしく、見ているだけでも楽しい気分になります。
短冊が揺れる様子も涼しげで、夏らしい雰囲気を楽しめます。
■『南部風鈴(鉄器)HANABI』
南部鉄で作られた、鉄製の風鈴です。
短冊には花火がデザインされていて、夏らしさを感じられます。
リーン、リーンと響く鉄ならではの深い音色を楽しみたい方におすすめです。
まとめ|風鈴は占い・魔除けから夏の風物詩へ変わった
風鈴は、もともと中国の占風鐸に由来するといわれています。
風の向きや音の鳴り方で吉凶を占う道具が、日本に伝わり、寺院では魔除けの意味を持つ風鐸として使われるようになりました。
その後、貴族の屋敷にも広がり、江戸時代にはガラス製の風鈴が登場します。
江戸後期から明治にかけて庶民にも親しまれるようになり、現在では夏の涼を感じる風物詩として定着しました。
同じ風鈴でも、江戸風鈴、南部風鈴、高岡風鈴、小田原風鈴など、素材や産地によって音色は大きく異なります。
風鈴の歴史を知ったうえで音を聞くと、ただ涼しいだけではなく、日本の暮らしや文化の奥行きまで感じられるかもしれません。
今年の夏は、風鈴の音に耳を澄ませながら、その長い歴史にも少し思いを向けてみてはいかがでしょうか。







