ガラス風鈴(江戸風鈴)、南部風鈴、小田原風鈴など、日本の夏に涼を運んでくれる風鈴にはいくつもの種類があります。
その中でも今回紹介する「明珍火箸風鈴」は、とても変わった形をしており、またその由来もとても興味を引くものです。
なにしろ、もと甲冑師(かっちゅうし)さんが作った風鈴なのですから。
ではそのちょっと変わった「明珍火箸風鈴」、ご紹介いたします。
明珍火箸風鈴はどのように誕生したの?
天皇に称賛された姫路の甲冑師
話は今から900年も昔の12世紀半ばの近衛天皇(平安時代)にまでさかのぼります。
ある時、ひとりの甲冑師が鎧(よろい)と轡(くつわ)をこの天皇に献上したのです。
天皇はその素晴らしい技術に称賛し、甲冑師に「明珍」の姓を授けました。
これが姫路市に現代まで伝わる明珍の名を持つ鍛冶師の始まりとされています。
甲冑から火箸へと
戦いが日常だった時代は、明治の世が始まって終りを迎えました。
それはつまり、鎧などの防具も、あまり必要とされなくなってしまうということなのです。
天皇お墨付きの鍛冶屋さんといえど、生活に困っては仕事を続けることはできません。
しかし、何百年も培われた技術をなんとしても後世に残したいと、鍛冶屋さんは思ったのです。
その結果、「名珍火箸」が誕生しました。
明珍家で培われた鍛冶の技術を「火箸」という一般家庭で使われる製品を作る過程に集約し、技術が廃れることを防いだのですね。
ですので「名珍火箸」には普通の火箸にはない大きな特徴が有ります。
それは「音」です。火箸同士をたたいた時に響く音色がとても美しく、聞く人の心をひきつけます。
この音色を出せるようになるまでには、5年以上の修行が必要といわれています。
ちょっとやそっとではまねはできない、ということですね。
明珍火箸風鈴の誕生
この明珍火箸がなぜ風鈴になったのか?
それは、日本で炭が使われなくなって来たことが原因です。
昭和40年代になると、一般家庭の燃料としてガスや電気が使われるようになり、炭の需要は減ってしまったのです。
当然、火箸も使われなくなっていきます。
この危機を乗りこえるため、明珍家第52代当主である明珍宗理さんの発案により、明珍火箸の類まれな音色をいかした風鈴が作られたといわれています。
ついに「明珍火箸風鈴」の誕生ですね。
今は「明珍本舗」の名で、明珍火箸風鈴の制作と販売が行われています。
明珍火箸風鈴の音色と作りって?
明珍火箸風鈴は、平安時代から引き継がれた甲冑作りの技術をいかし、1つ1つ手作りで作られています。
ですので1つとして同じ音色はありません。
すべての明珍火箸風鈴に共通するのはりーんりーんと長い余韻の澄み渡った高めの音色で、鈴虫の声にたとえられることが多いですね。
その姿は、一緒につるされた長さ20センチほどの火箸4本の中間あたりに舌(ぜつ)がつるされている形になっています。
舌につるされている短冊が揺れると舌が火箸にふれて、先ほど説明したような、とても涼やかな音色を響かせるのです。
どこで買えるの?お値段は?
すべて手作りということもあり、一番安価なものでも1万円以上はしています。
また品質にもいくつかの種類があり、一番安価なものの上には「上上」「特」「特上」「特特上」「最上」が存在します。
最も品質の良い「最上」になると10万円以上もするのです。
また、素材は鉄が基本となっていますが、ピアノ線材やチタン製のものもあり、なかには玉鋼(たまはがね)という刀を作るための素材を使った特別な風鈴も存在しています。
このちょっと高価な明珍火箸風鈴を安心・確実に手に入れるには、「明珍本舗」が経営する公式オンラインショップを利用するのが確実でしょう。
すべての品質・素材の風鈴がとても見やすく並べられていて、じっくりと見比べることができますよ。
もちろんAmazonや楽天といったネットショップでも手に入れることはできます。
あなたの買いやすいほうで検討してみてくださいね。
あとがき
一口に「風鈴」といっても、その歴史や由来、材質などはさまざまです。
夏の暑い日に涼しげな風鈴の音色をゆったりと聞きながら、歴史に思いをはせる、なんていうのも良いのではないでしょうか。
あなたのお気に入りの風鈴を手に入れて大切にしてあげれば、風鈴もあなたの想いに答えてくれるかもしれません。
なにしろ風鈴は「風の便り」を届けてくれるのですから。