日本にはさまざまな風鈴があります。
その中でも特に変わった風鈴は、と問われたら「備長炭風鈴」と答えるかもしれません。
なにしろ炭で作られた風鈴なのですから。
この記事では、備長炭風鈴の特徴、そしてその素材となる備長炭について紹介してみました。
参考になるとうれしいです。
備長炭風鈴って、どんな風鈴?
炭で作られた風鈴
備長炭風鈴は、和歌山県の無形文化財でもある「紀州備長炭」で作られています。
しかもすべて手作りです。
焼かれたままの自然の形をいかしているので、形や大きさが1つ1つすべて違っているのです。
風鈴の姿は、備長炭が4本つるされているのが基本です。
その4本の備長炭の中に舌(ぜつ)がつるされ、その舌につながった短冊が風を受けて涼しげな音色を響かせるのです。
どんな音色?
とても堅い備長炭からは、カンカン・キンキン・キインと鉄と鉄がぶつかるような音が響きます。
でも冷たい感じではなく、とても温かみのある音色なんです。
それはまるで打楽器の1つである「炭琴(たんきん)」の音色のようです。
風が音楽を奏でている(かなでている)ように感じますよ。
*ちょっと寄り道 「炭琴(たんきん)」とは
秋津川中学校では、今も音楽の教材として使われています。
鉄琴よりも温かみのある音色が特徴です。
備長炭風鈴って、値段はどのくらい?
備長炭風鈴は3,000円から7,000円ほどで、専門のネットショップや楽天などの通販サイトで売っています。
備長炭のサイズが大きくて太いものほど、値段が高くなっています。
「備長炭」の歴史
ウバメガシから作られた白炭(はくたん)
平安の世の西暦800年代、遣唐使として唐に使わされていた弘法大師空海が、日本に製炭技術を持ち帰って来ました。
そしてその技術は仏教とともに全国に広まって行ったのです。
とくに紀州(今の和歌山県)では、その地に広く分布していたウバメガシを原材料として炭が作られるようになりました。
ウバメガシによって作られた炭はとても堅く焼き上げられていて、最高の品質を誇る白炭になったのです。
この炭の作り方は全国の製炭技術のお手本となりました。
江戸時代の紀州藩では製炭奨励策が施行され、紀州で作られる品質の高い白炭は全国に知られることとなったのです。
*ちょっと寄り道 「白炭」と「黒炭」
木炭には「白炭」と「黒炭」があります。
白炭はカシから作られることが多く、1,000℃以上の熱で焼成されるため非常に堅いのが特徴です。
火力が強く火持ちが良い反面、火が付きにくいという欠点がありますし、黒炭よりも価格が高いのが普通です。
近赤外線の効果があるため、高級料理用の燃料として使われることが多いですね。
黒炭はクヌギやコナラから作られています。
400℃から700℃くらいで焼成され、やわらかく火がつきやすいのが特徴です。
しかし白炭にくらべると火力が弱く、火持ちも悪いのです。
黒炭は焼き魚などの一般的な燃料や、火鉢(ひばち)や囲炉裏(いろり)などに多く使われています。
「備長炭」の名前の由来
「備長炭」は、江戸元禄時代の西暦1730年に紀州藩の炭問屋だった備中屋長左衛門が名付けたといわれています。
備中屋長左衛門は木炭産業の発展に大きく貢献していて、1783年には「大年寄」に就任しています。
あとがき
ちょっと風変わりな風鈴を軒先(のきさき)につるすと、まるで炭琴を奏でる(かなでる)ような音色で涼を運んでくれます。
あなたもお気に入りの備長炭風鈴を手に入れて、風の奏でる音楽に耳を傾けてみませんか。
とても素敵な夏の日が過ごせるかもしれません。